2022/01/15
一般的なイメージとして「保険=安い」というイメージがあると思います。
実際歯科関係のBBSに
「保険で数万するってボッタクリじゃない?」
といった書き込みが見られます。果たして何が本当なのでしょうか?
保険がきく治療には全て「保険点数」というものが国によって決められています。
「保険点数」は1点が10円です。例えば再診料は53点で歯医者に530円が入ります。そのうちの3割や1割の負担分が患者さんの窓口負担分になるのです。
その保険点数は、患者さんが思っているより高い設定になっているものがあります。
例えば前歯の被せ物を作る場合。前歯でも白い被せ物を保険で作ることができます。
この場合いくつかの点数が定められています。
まず型取りをする日には、再診料・歯を削る代金・型取りをする代金・噛み合わせをとる代金・仮歯を作る代金がかかります。神経がある歯の場合は全部で1,015点、3割負担で3,050円がかかります。
次に被せ物を歯に装着する日には、再診料・被せ物自体の代金・装着する手数料・駄目になったときの保険料・接着材代がかかります。全部で2,319点、3割負担で6,960円です。
つまり1本で約1万円かかるわけです。
これが6本あれば6万円になり、保険でも数万円がかかるわけです。
何の代金が高いかというと、削る代金と被せ物自体の代金です。合わせて2,896点、3割負担で8,690円です。
前歯は見た目が重要で、削る形が大事なので、その分削る代金が高くなっています。
被せ物は金属の裏打ちの上に白いプラスチックを貼り付けるもので、金属の部分は金や銀などの合金でできているため金属代がかなりかかりますし、精密な仕事をする技工士さんの技術料もかかります。アクセサリーが小さいのに高いのと同じです。
ちなみに奥歯の一部に銀歯を入れる処置は、全部で1,142点で、3割負担で3,430円、前歯の被せの3分の1程度の代金です。
しかし患者さんからすると、型取りをして次の回にものを入れて終了というのはどちらの治療でも同じなので、前歯の被せ物がすごく高く感じてしまうことはあると思います。
他の例は入れ歯を入れるときもかなりの金額がかかるときがあります。
入れ歯の大きさによって変わるのですが、保険の入れ歯でも上下で2万円することがあります。
しかし入れ歯の場合は金額に納得される方が多いように個人的に思います。
大きなものが入るからでしょうか。
これは私の考えですが、一般的に患者さんは「入るものの大きさ」と「かかった手間」によって、その治療の「適正金額」を考えている気がします。その「適正金額」より高いと感じると「ボッタクリか?」と思い、逆なら「意外と安いね」と思うのではないでしょうか?
例えば、根の中の治療をする際は30分程治療しても1回で数百円という場合があります。これは「意外と安いね」です。
また、こんな笑い話があります。親知らずを抜いた時に秒殺で抜けたため、患者さんが「こんなに短い時間しか治療していないのに、こんなに金を取るのか!ボッタクリだ」と怒ったそうです。すると歯医者は言います。「じゃあ、もっと時間をかけて抜きましょうか?」と。歯科医師の研鑽によって治療時間が短くなっていることに気付いていない患者さんの一例ですね。
「保険点数」は様々な要素をもとに決められており、高くも安くも実際の治療の流れにそぐわない金額になることがしばしばありますので、そのあたりはご理解いただきたいと思います。
ただ私もボッタクリ歯医者の噂は聞いたことがあります。
ひどいものでは上下総入れ歯の方が来院したときに(総入れ歯なので歯は1本もありませんが)、全ての歯があったことにして全ての歯を抜く点数を取ってしまう歯医者がいるそうです。
また、毎回違う治療をしているにもかかわらずなぜか毎回3,000円程度の会計になる、という歯医者もあります。これにはカラクリがあって、「やっていない歯の虫歯の治療をやったことにして、毎回3,000円ぐらいになるように調整しろ」と院長の指示があるそうです。(このパターンの歯医者、意外と多いです)
ボッタクリ歯医者が実在する以上、もしあまりに高いなと感じたときは「明細書をもらえませんか?」と勇気を出して言ってみるのも1つの手ではないでしょうか。明細書の発行は義務化されていますので。