「デンターネット」のブラック投稿を見ていたらこんな書き込みがありました。
「そこの先生はやたら麻酔を打ちたがる。こないだは院長に麻酔をされたが、ぜんぜん効かず何本も打たれた。この麻酔も治療費の上乗せになってるんだろう」
実はこれは全くの誤解です。この方は型取りを何回もされたことも治療費の上乗せになっていると書いていらっしゃいますが、これも誤解です。
実は、麻酔は無料になる場合とならない場合があるんです。
麻酔にお金がかかるのは、それはあまりお金がかからない処置をしたとき(例えば虫歯を取って一旦仮詰めにするとか)や、抜歯などの外科処置をしたときです。虫歯を削って詰める治療では麻酔はタダです。
ですので、麻酔をやたら打ちたがるのは患者さんに痛い思いをさせたくないからではないでしょうか?
型取りも同じです。もちろん型取りにはお金がかかりますが、何回とっても同じ金額です。
型取りはある程度失敗しても、詰め物を作ることは可能です。ただそれでは合い具合が悪い詰め物になります。合い具合が悪い詰め物は中から虫歯になったり、すぐ取れたりします。しかし、患者さんには合い具合が悪いかどうかなんて見た目では分かりません。
型の取り直しをするのは、ちゃんとしたものを作ろうとしている証拠です。
全く型取りをやり直さない歯医者は神の領域の技術の持ち主か、手を抜いて治療しているかどちらかです。
このように、きちんと治療しているであろう歯医者さんが患者さんとのコミュニケーション不足による誤解で悪口を書かれているのを見ると、心が痛みます。
コミュニケーションが大事だと改めて感じました。
一般的なイメージとして「保険=安い」というイメージがあると思います。
実際歯科関係のBBSに
「保険で数万するってボッタクリじゃない?」
といった書き込みが見られます。果たして何が本当なのでしょうか?
保険がきく治療には全て「保険点数」というものが国によって決められています。
「保険点数」は1点が10円です。例えば再診料は53点で歯医者に530円が入ります。そのうちの3割や1割の負担分が患者さんの窓口負担分になるのです。
その保険点数は、患者さんが思っているより高い設定になっているものがあります。
例えば前歯の被せ物を作る場合。前歯でも白い被せ物を保険で作ることができます。
この場合いくつかの点数が定められています。
まず型取りをする日には、再診料・歯を削る代金・型取りをする代金・噛み合わせをとる代金・仮歯を作る代金がかかります。神経がある歯の場合は全部で1,015点、3割負担で3,050円がかかります。
次に被せ物を歯に装着する日には、再診料・被せ物自体の代金・装着する手数料・駄目になったときの保険料・接着材代がかかります。全部で2,319点、3割負担で6,960円です。
つまり1本で約1万円かかるわけです。
これが6本あれば6万円になり、保険でも数万円がかかるわけです。
何の代金が高いかというと、削る代金と被せ物自体の代金です。合わせて2,896点、3割負担で8,690円です。
前歯は見た目が重要で、削る形が大事なので、その分削る代金が高くなっています。
被せ物は金属の裏打ちの上に白いプラスチックを貼り付けるもので、金属の部分は金や銀などの合金でできているため金属代がかなりかかりますし、精密な仕事をする技工士さんの技術料もかかります。アクセサリーが小さいのに高いのと同じです。
ちなみに奥歯の一部に銀歯を入れる処置は、全部で1,142点で、3割負担で3,430円、前歯の被せの3分の1程度の代金です。
しかし患者さんからすると、型取りをして次の回にものを入れて終了というのはどちらの治療でも同じなので、前歯の被せ物がすごく高く感じてしまうことはあると思います。
他の例は入れ歯を入れるときもかなりの金額がかかるときがあります。
入れ歯の大きさによって変わるのですが、保険の入れ歯でも上下で2万円することがあります。
しかし入れ歯の場合は金額に納得される方が多いように個人的に思います。
大きなものが入るからでしょうか。
これは私の考えですが、一般的に患者さんは「入るものの大きさ」と「かかった手間」によって、その治療の「適正金額」を考えている気がします。その「適正金額」より高いと感じると「ボッタクリか?」と思い、逆なら「意外と安いね」と思うのではないでしょうか?
例えば、根の中の治療をする際は30分程治療しても1回で数百円という場合があります。これは「意外と安いね」です。
また、こんな笑い話があります。親知らずを抜いた時に秒殺で抜けたため、患者さんが「こんなに短い時間しか治療していないのに、こんなに金を取るのか!ボッタクリだ」と怒ったそうです。すると歯医者は言います。「じゃあ、もっと時間をかけて抜きましょうか?」と。歯科医師の研鑽によって治療時間が短くなっていることに気付いていない患者さんの一例ですね。
「保険点数」は様々な要素をもとに決められており、高くも安くも実際の治療の流れにそぐわない金額になることがしばしばありますので、そのあたりはご理解いただきたいと思います。
ただ私もボッタクリ歯医者の噂は聞いたことがあります。
ひどいものでは上下総入れ歯の方が来院したときに(総入れ歯なので歯は1本もありませんが)、全ての歯があったことにして全ての歯を抜く点数を取ってしまう歯医者がいるそうです。
また、毎回違う治療をしているにもかかわらずなぜか毎回3,000円程度の会計になる、という歯医者もあります。これにはカラクリがあって、「やっていない歯の虫歯の治療をやったことにして、毎回3,000円ぐらいになるように調整しろ」と院長の指示があるそうです。(このパターンの歯医者、意外と多いです)
ボッタクリ歯医者が実在する以上、もしあまりに高いなと感じたときは「明細書をもらえませんか?」と勇気を出して言ってみるのも1つの手ではないでしょうか。明細書の発行は義務化されていますので。
歯を抜くと聞くと誰もが「うわ、痛そう」と思うでしょう(実際はまったく痛くなく抜けます)。
でも、実際にどうやって抜くのかは知らない方が多いと思います。今回はそのあたりをご説明します。
まずは虫歯になっておらず、普通に生えている歯の抜き方ですが、掴むところがあれば鉗子(かんし)というペンチのような道具で掴んで引っ張って抜きます。「歯を抜く」治療のイメージに一番ピッタリくる方法ではないでしょうか?
では、虫歯が大きくなって歯の頭が崩壊し、根っこだけが残っていて掴める部分がない歯はどうやって抜くのでしょうか?
その場合はショベルのような挺子(ていし)という道具(ヘーベルやエレベーターとも言います)で掘り起こすように抜きます。
また、歯茎に埋まっている歯を抜く場合は、歯茎をメスで切って歯を抜き、切った部分は糸で縫います。
特に大変なのは歯茎に埋まっている上に真横を向いている下の親知らずです。
まずはメスで歯茎を切ります。
歯は横向きに生えていて、抜きたい方向に手前の歯がありますので普通に抜けません。
まず親知らずの頭の部分を削って切断し、上に取り出します。
その後で頭を取り出してできたスペースに根っこ部分を挺子で取り出して抜きます。
最後に切った部分を縫って終わりです。
聞いただけで痛そうですが、実際は麻酔が効いてしまえば痛くありません。ただ、麻酔が効きづらい方もいらっしゃいます。その場合は我慢せずちょっとでも痛みを感じたときに教えてもらえればすぐに麻酔を追加して、痛くないようにしてから抜きますのでご安心ください。
SNSなどの書き込みで、
「頼んでもない歯を治療されて、さらに痛みが出て最悪」
のようなものをよく見かけます。
これに対する歯医者側の言い分を書きます。
1.まず「頼んでもない歯を治療されて」のくだりです。
もちろん虫歯があったとしても、そのことをきちんと説明し同意の上で治療をしないと下手したら「傷害罪」です。
でも、虫歯は一旦できてしまえば治療しなければ自然治癒することはありません。そのときに治療をしておかなければ必ず進行し、いずれ痛みが出ます。
「頼んでもない歯を治療されて」と書き込んでいる人はきっと痛みが出た時に
「あのとき治療してくれていれば痛みが出なかったのに。ちゃんと治療しろよ」
とおっしゃるのでしょう。
歯医者側としたら「頼んでもないのに」ではなくて「虫歯を見つけてくれてありがとう」と思っていただけると幸いです。
2.次に「痛みが出て」のくだりです。
歯の痛みが出る理由はいろいろありますが、その中の1つとして虫歯が深かったことが考えられます。
虫歯を削るのに使うドリル(タービン・コントラといいます)は、削る時に摩擦熱が発生します。そのため水を出して冷やしながら削っているわけです。
虫歯が深すぎるとこの摩擦熱が歯の神経に伝わりやすく、神経が炎症を起こし痛みが出ます。痛みがあまりに強い時は神経を取る必要があります。
じゃあ、虫歯が深かったら全部神経を取っちゃえばいいんじゃないの?というわけにはいきません。神経を取ると歯の寿命は極端に短くなります。
歯を削っている時は麻酔をしていることが多いため、麻酔が切れたあとに痛みが出るかどうかはその場では分かりません。
ですから、なるべく神経を残したい歯医者は痛みが出ないことに賭けて、神経を取らずに処置を終了するわけです。その結果、治療後に痛みが出てしまうことは普通にあります。
この歯医者さんをあなたはヤブ医者と呼びますか?
もちろん、患者さんに痛みを感じさせたくないという思いから、虫歯が深ければ神経を取ってしまう歯医者さんはいるでしょう。それはそれで「思い」がありますからいいことだと思います。
歯医者は歯医者でいろんなことを考えてやっています。どうかそのことをご理解いただければと思います。
上記のような書き込みがされるのは恐らく歯医者側の説明不足や信頼関係の欠如によるものでしょう。きちんと説明をして信頼される歯医者でありたいと思います。
「歯磨き粉はなにを使えばいいんでしょうか?」
という質問はよくされます。
基本的に「なにも使わないで大丈夫です」とお答えしています。
歯磨きをする目的は「歯垢(バイ菌の塊)」を歯から落とすことで、歯磨き粉を使わずとも歯垢は落とせます。
むしろ歯磨き粉を使うことによるデメリットがあるんです。
<歯磨き粉のデメリット>
1.さっぱりして磨いた気になってしまう
目的である歯垢を落とすことがぜんぜんできていなくても、お口の中がさっぱりするのでちょっと磨いただけで磨いた気になってしまいます。
2.泡が立って長時間磨けない
泡が立ってくるとうがいをしたくなります。1回うがいをするとそこで終了してしまうことが多いです。
3.歯が削れていく
研磨性の強い歯磨き粉に硬い歯ブラシでゴッシゴシ磨いていると歯がどんどんと削れてしまいます。
ですが、歯磨き粉がいけないといっているわけではありません。
デメリットを理解して、歯磨きの本当の目的が分かっていれば、歯磨き粉を上手に使うことができます。
フッ素入りの歯磨き粉や知覚過敏用の歯磨き粉、カルシウムを含むものや歯周病に効くものなどさまざまありますので、なにを使えばいいか分からない方は担当の歯科衛生士にお尋ねください。